【ミスター・メルセデス】はスティーブン・キング初のミステリー?
スティーブン・キングがミステリーに初挑戦した作品と聞いて、読んだ【ミスター・メルセデス】。結構最初のほうで読者には犯人が誰だかわかってるから、ミステリーというよりサスペンスじゃないかなと思った。その犯人がまたどでかい事件を起こすってんで、それを阻止しようと奮闘するからサスペンスに部類されるのではないだろうか。犯人を最後まで明かさず解明する探偵物のような作品がミステリー、犯人の魔の手から逃げるor企みを阻止するのがサスペンスの認識で、【ミスター・メルセデス】は後者に入るのではないかな。
それでもアメリカで最高のミステリー小説に送られるエドガー賞を取っているんだから、ミステリーとして認識されているのかな。まあ、ミステリーだろうがサスペンスだろうが【ミスター・メルセデス】が面白かったことだけは確か。やっぱりキングは人物描写が良いね!
本当に【ミスター・メルセデス】がキング初のミステリーなのか?
【ミスター・メルセデス】がミステリーか否かは置いておいて、本当にキング初のミステリー作品かということには疑問がある。というのもそれ以前に『ドロレス・クレイボーン(黙秘)』があるからだ。あの作品こそドロレス・クレイボーンが本当に富豪の女性を殺したのか、そして過去にふたりの間にどんな関係があったのかが作品の最後に明かされるから、あっちの方がミステリー作品らしい内容になっていると思う。
【ミスター・メルセデス】の感想
で、肝心の感想はというととても身近なところにあるサスペンスという感じで楽しめた。犯人のメルセデス・キラーはちょっとした天才かもしれないが、そこらのネットオタクが色んなところから情報を得てくるような知識を持っているだけだし、犯行動機も自分の人生や世間に不満を持っているためと、如何にも現代風で身近な犯人像だ。超越していないところが、身近に感じやすく、楽しめるポイントだった。
かたやメルセデス・キラーを追う退職した刑事のホッジズはメルセデス・キラーを追う前は退職して退職した日々に失望して弱々しかった。メルセデス・キラーからの挑戦状で活気を戻すが、やっぱり退職した刑事という感じで特に能力はない。そこは超越した頭脳を持つ探偵とは違っていて、新鮮な気持ちで読めたと思う。
メルセデス・キラーはネットの世界に強い人物だが、ホッジズはそうではない。そこで活躍するのが40代なのに精神は少女のホリー。彼女はネットの世界の技術に少しだけ詳しいが、メルセデス・キラー追跡に大いに役立つ。超越していないが、ちょっと得意なことで協力し合ってメルセデス・キラーによる大きな企みを阻止する物語はハラハラできて面白かった。
あからさまなお膳立てがちょっとわざとらしい?
偶然のできごとにより、事態が思わぬ方向へと転がったりするが、そのためのお膳立てに粗が目立つのが気になった。特にメルセデス・キラーがホッジズと間違えて別人を殺してしまうところ。見間違うための舞台を作者の手でお膳立てしたようなわざとらしさがあったように思える。