『ナイトシフト』≪上巻≫【深夜勤務】を趣味全開書評

【深夜勤務】

 

スティーブン・キング最初の短編集。若さとアイデアに満ち溢れた作品。多少ベタに感じられるのは時代なのか。むしろキングがこの手の話をベタにさせたと言っても過言ではない。とにかく多彩なホラーが魅力の短編集だった。

「地下室の悪夢」

工場で働く低賃金労働者が地下室の掃除をさせられる話。下水とネズミやコウモリの糞尿であふれた劣悪な環境での掃除をするなか、まるまる太って人間を襲うネズミの巣を見つけてそこに踏み入ったのが悲劇の始まりだったという内容でした。

「地下室の悪夢」はただ地下室で得体の知れないネズミとコウモリに襲われる話だけど、それだけで終わっているのが残念だったかな。スティーブン・キングのホラーとしては弱ぎる内容だったし。相変わらずの濃い人物描写で読み物として成立している感はあるけど、流石はキングの手腕と感じた点でもありました。

結論を書かないことにより、突然変異したでかいネズミの正体について想像力をかきたてられたのは良い経験だったと思う。地下室に得体の知れないネズミなんてラブクラフトの世界観を内包しているしね。あれは邪神の眷属か何かだったのではなかろうか。

内鍵と死体のなぞ

ネズミの巣となっているさらなる地下室への扉が内側から施錠されているギミックが「地下室の悪夢」のミソになっていると思う。誰がカギをしたのかという謎があるが、それは中で発見した死体で解決されている。しかしこの死んだ人物はどうして自分の命と引き換えに内側から鍵を閉めたのだろうか?

それは地下室の変異生物たちが外に出ないためと安易に想像できる。そして自分の命と引き換えにするほどコイツらが外に出たらヤバいということも。さてその施錠と扉は開かれてしまった。そして「地下室の悪夢」は第2陣が先行組を探しに地下へと入っていくことで終わっている。彼らとそして変異生物があふれ出した世界に待ち受けている運命とは一体なんなのだろうか。

「波が砕ける夜の浜辺で」

インフルエンザが人類を滅ぼそうとしている世界で、若者たちがあてもなくさまよい歩く話。世界滅亡のカウントダウンという非日常の中に日常的な行動だけが繰り広げられるという作品。なんだか一部を切り取っただけな中途半端な作品になっている気がする。

「波が砕ける夜の浜辺で」で起こった劇的なことといえば、A6で死にかけている人間を火葬したこと。そしてA2にかかったことにある人間がA6に感染してしまったことかな。A2にかかった人間は世界を滅ぼそうとしているA6にかからないという説が打ち砕かれたのか、単にそいつがA2にかかったとウソをついていたのかわからない終わりとなっています。ハッピーエンドでもバッドエンドもない終わり方はなんともスティーブン・キングらしいストーリーでした。

「やつらの出入り口」

宇宙飛行士が宇宙人に寄生されて腕に目が生えた話。そのに寄生した何かが子供を殺してしまったことから始まる。子供を殺してしまったことも包帯で隠した腕に目があることも他人からは懐疑的で、宇宙飛行士の妄言かどうかわからないところが不気味な作品だったと思う。

最後は宇宙飛行士が自らの腕を焼くことで目はどっかへ行っていまっている。最終的に子供の身元と行方不明である事実がわかって、宇宙飛行士の妄言でない可能性が高くなることで物語に真実味が帯びて面白い。そして最後に降りかかる絶望が短編らしい物語運びで良かった。

「人間圧搾機」

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

マングラー [ ロバート・イングランド ]
価格:2145円(税込、送料無料) (2020/8/7時点)

楽天で購入

 

「人間圧搾機」は洗濯工場で人間の血の味を覚えた圧搾機が暴走して人間を殺す話。最初の犠牲者の事故後に真相が解き明かされていく様子がわくわくした。その後も物言わぬ圧搾機の欲求が犠牲者を通して伝わってくるのが怖かった。

しかし途中で悪魔が乗り移ったとかいう話になって残念だった。見様見真似の悪魔祓いで余計に圧搾機を暴走させていたのは面白かったけど。そして最後は古典的な終わり方。まだ若いからなのか、キングらしい構成がまだまだできあがる前のって感じの短編だった気がする。

「子取り鬼」

「子取り鬼」はアメリカで語られる有名な幽霊ブギーマンに3人の子供を殺された男が精神科医に懺悔する話。この子供を殺された男がなんだかいけ好かないのはキングの狙いなのだろうか。御大層な教育論を並べ立てていたけど、全部的外れな感じがした。

途中、ブギーマン(子取り鬼)なんていなくて、この男が殺したんじゃないかと思ったほど。「人間圧搾機」同様にベタなオチだったけど、なんでそうなるのか腑に落ちない感じが残念だった。なんか長編映画化するようで、どうなるんだろう。

「灰色のかたまり」

「灰色のかたまり」は賞味期限を過ぎたビールを飲んだ父親の体がずぶずぶと灰色のかたまりに崩れて行く話。子供から話を聞いた大人たちが家の様子を見に行く様子が不気味で恐ろしげだった。灰色のかたまりになった男の描写も良い。

それよりも特筆すべきは、この話が「ジョジョの奇妙な冒険」杜王町に住む虹村兄弟の父親の元ネタになっているということ。DIOが死んだことにより肉の芽が悪さをして、虹村親父も肉のかたまりと化していった。虹村形兆のバッドカンパニーの能力もスティーブン・キングの短編が元ネタだったなあ。

 

「戦場」

「戦場」はおもちゃ会社の社長を暗殺した殺し屋におもちゃの兵隊が復讐しに来るという話。虹村形兆のバッド・カンパニーの元ネタとなった話ですね。「あれ、でもこの小説読んだことあるぞ、他の短編集にも収録されたのかな?」と思ったけど、たぶん映像化の方を観たんだね。

「トラック」

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

地獄のデビル・トラック【Blu-ray】 [ エミリオ・エステヴェス ]
価格:5280円(税込、送料無料) (2020/8/12時点)

楽天で購入

 

「トラック」はトラックが意思を持ち、人々をひき殺しはじめる話。人々はガソリンスタンドに併設されたレストランに閉じ込められてしまうのが絶望だった。『地獄のデビル・トラック』として映像化もされました。

ガソリン切れで動けなくなるトラックたちが人間に給油しろと要求しだすトラックたちに人間がずっと奴隷化する未来しか見えなくて絶望的すぎた。主人公は意思を持った車たちが劣化で動かなくなる未来を期待しているが、そのうち修理とかも要求してきそう。

「やつらは時々かえってくる」

「やつらは時々かえってくる」は兄を殺したいじめっ子が地獄から戻ってくる話。死んでも弟を地獄に連れて行こうとするいじめっ子たちの執念か。最後の現象が想像力にあふれていて読んでて面白かった。しかし死んだいじめっ子が自分をいじめぬきに帰ってくるって相当怖いなあ。

「呪われた村」

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

呪われた町 上 (文春文庫) [ スティーヴン・キング ]
価格:1045円(税込、送料無料) (2020/8/12時点)

楽天で購入

 

「呪われた村」はスティーブン・キング自身の長編小説『呪われた町』の舞台とあったセイラムズ・ロットで過去に起こった忌まわしい出来事が書かれている。手紙や手記による物語構成で、古い言い回しがたまらない。

一族にまつわる呪いと「うじむしの神秘」という魔導書が実にクトゥルフ神話らしい。ふつうにラブクラフト全集の中にあっても不思議ではない一品だった。

こちらの記事も人気です

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA