アメリカン・ホラー・ストーリーSeason2

『アメリカン・ホラー・ストーリー: 精神科病棟』の基本情報

アメリカン・ホラー・ストーリー:精神科病棟 シーズン2 (字幕版)

『アメリカン・ホラー・ストーリー』はライアン・マーフィーブラッド・ファルチャックによって制作されたアメリカのドラマです。シーズンごとの繋がりはなく、独立した話により展開されます。2012年から2013年の間にアメリカで放送されました。

第2期となる「アサイラム」はその名の通り、精神病院で繰り広げられます。精神病患者たちであふれる異常な世界、陰謀、そしてキリスト教支配による陰鬱さ。雰囲気的にもホラー感が強い作品です。

アサイラムで起こる3つの出来事:『アメリカン・ホラー・ストーリー: 精神科病棟』の見どころ

本作「アメリカン・ホラー・ストーリー: 精神科病棟」では大きく分けて3つの物語が展開しており、それらが複雑に絡み合っているところが見どころのひとつです。ひとつは廃墟となった精神病院に巣食う殺人鬼というスプラッター要素となっています。カップルが肝試しに忍び込み、セックスしたら殺されてしまうというお決まりのアレです。

もうひとつがエイリアンによるアブダクション。キットは自宅でエイリアンによるアブダクションを経験しており、妻を含めて他の女性を殺害した容疑で逮捕、供述によって精神異常を疑われ、精神病院に収容されます。この記憶がキットの罪悪感から作り出した妄想か現実なのかわからないところが面白いです。

3つめは悪魔によるポゼッション。キリスト系が経営する病院で、神の庇護のもとに患者の思考を正しい方向へ導こうとしています。そこへ悪魔によるポゼッションを疑われた患者のエクソシズムが行われました。無垢なシスターに乗り移った悪魔が人間の欲望を使って悪さします。そこには人間の持つ悪しき部分に憧れるカリスマ性を持っており、何をしでかしてくれるのかワクワクできます。

こうしたホラー要素に欠かせない3つの要素がこの『アメリカン・ホラー・ストーリー:アサイラム』にはありますが、通常のホラーはこの3つのどれか1つしか描きません。それほどこの3つは相いれない独立した強い存在感を持っているのです。しかし本作はこうした強いジャンルが過多になっているため、多く盛りすぎたビュッフェのようなわくわくかんがあります。

人物について掘り下げて感想(ここからはネタバレあり)

キット・ウォーカー(エヴァン・ピーターズ)

 

キット・ウォーカー(エヴァン・ピーターズ)は主人公と言えるべき存在です。妻を含めた多数の女性の首を刎ね、皮を剥ぎ、殺害した容疑で施設へと入れられます。そこでシスター・ジュードの軽蔑的な目と徹底的な好戦の意思を浴びせられ、そのうえ頭の狂った連中の中に入れられる疎外感や閉塞感は半端ありません。

キットの妻は黒人で、人種差別が当たり前にあったアメリカにおいては考えられないような弾圧すべきカップルでした。しかしここに至る経緯の前にその障壁に立ち向かおうとする懸命なカップルの姿を見せられています。

それに加えて人当たりの良さそうなキットの人柄からも彼が犯人ではないと確信できます。そんな彼がマッドな意思による事件の餌食になったり、懲罰がきつかったりと同情を誘うキャラクターです。また中心人物でもあるため、多くのキャラクターとの接点も持ちます。

シスター・ジュード(ジェシカ・ラング)

シスター・ジュード(ジェシカ・ラング)はこの物語の裏の主人公です。精神病院での治療やプログラムなどを取り仕切っており、厳格なキリスト教としての信念から、時には悪のように厳しく患者たちを折檻します。この恐ろしい演技でジュードを演じたジェシカ・ラングは評価されました。

厳格だからといってこのシスター・ジュードが完全なる善ではなく、裏の顔があるのも面白いです。ティモシー・ハワード神父と野望を共有しており、悪評からその夢が妨げられるのを恐れ、裏の事情を知ってしまったジャーナリストを策略で無理やり精神病院に入院させたり、酷い一面も持っています。

またシスターになる前には過去に飲酒運転で少女を轢いたという過去もあります。そんな彼女がジャーナリストを病院から抜け出させるよう根回ししたり、贖罪をしたり一番の成長を見せます。またキットの子供たちから魂を浄化されて死ねたため、一番救われた人物でもあるのです。

アーサー・アーデン(ジェームズ・クロムウェル)

アーサー・アーデン(ジェームズ・クロムウェル)は地下を牛耳るマッド・サイエンティストです。夜な夜な患者を実験に使っては殺してしまう身勝手な科学者をやっています。研究所にはホルマリン漬けの脳などが補完されており、かなり危険な存在です。

しかも裏にはではとても口に出せないようなペットを飼っています。そんな彼の野望は死を超越すること。実験と称して薬を打たれた患者は人間の肉をむさぼる冒涜的な存在へとなってしまうのです。このマッドぶりが怖くて面白い!

しかし失恋で失望したアーデンはこうしたペットを皆殺しにしてしまいます。おそらく現代の廃館になった精神病院でカップルを殺した存在の伏線をミスリードにするために書かれた存在で、ここで視聴者に実はミスリードでしたと煙に巻くための演出じゃないかと思っています。

シスター・マリー・ ユニス(リリー・レーブ)

シスター・マリー・ ユニス(リリー・レーブ)は純白のような存在です。それ故に悪魔に憑りつかれてしまいます。もともと無垢で可愛い顔が、悪そうな顔で悪戯っぽく笑う演技が高評価です。とにかく可愛くて、何をしでかすのかわからない面白さがあります。

それが精神病院を牛耳って何か重大な出来事を引き起こしてくれるかもしれない悪魔ことシスター・ユニスですが、途中退場しちゃったのが不満でした。しかも高いところから突き落とされて。

しかもシスター・ユニスが死んだら悪魔も忽然と姿を消してしまった。むしろこの悪魔が物語の主軸になるかと思ったのに、なんだか寂しいです。納得できません。ここからストーリーの主軸は別の物へとシフトチェンジします。

オリバー・スレッドソン(ザカリー・クイント)

オリバー・スレッドソン(ザカリー・クイント)が実は物語の主軸にいる中心人物その1です。最初はトッドの精神鑑定をする精神分析医としての登場だったので、存在感のあるサブキャラとしか思っていませんでした。

ところがどっこいこのオリバー・スレッドソンこそ真のブラッディ・フェイスであり、誤認逮捕されたキットを身代わりとしてブラッディ・フェイスに仕立てあげようとしていたのです。

そして言葉巧みに施設から救い出したラナ・ウィンターズを餌食にしようと監禁し、レイプして子供を孕ませます。そしてこの子供が物語を締めくくるキーパーソンとなるのです。この意外な主軸の鞍替えが、『アメリカン・ホラー・ストーリー:アサイラム』に複雑な面白さを与えています。

ラナ・ウィンターズ(サラ・ポールソン)

本物のブラッディ・フェイスに子供を孕まされるラナ・ウィンターズ(サラ・ポールソン)こそ物語の結末を奪った最大の怪盗です。始めは精神病院の虐待の実態を暴こうとした正義として現れ、不正に精神病院へ収容された被害者となり、モンスターの子供を産む母親へと転身します。

殺人鬼の子供を産むことを忌み嫌っていたラナはその子供を手放します。そしてブラッディ・フェイスとの体験記を本にして、一躍有名となるのです。しかし嘘で塗り固められた名声に酔いしれたラナはいけ好かない女になってしまいます。

しかも精神病院の実態を暴くという約束まで反故にしてしまうのです。その後は幻覚に責められて罪悪感から精神病院の実態を暴き、廃館へと追い込みます。しかし最後は自分を殺しにきた息子を嘘で油断させ射殺するなど、やっぱり嫌な女で終わっています。しかもまるでこの『アメリカン・ホラー・ストーリー:アサイラム』が彼女の物語であったかのような演出。何もかもずる過ぎて憎いキャラクター性が面白かったです。

ブラッディ・フェイスの息子(ディラン・マクダーモット)

最初の数話の冒頭で廃館となってしまった現在の精神病院に巣食うモンスターの正体がブラッディ・フェイスの息子(ディラン・マクダーモット)の出現により、明らかにされました。ブラッディ・フェイスの息子がその正体ですね。

父親に憧れていた息子は父親を殺した母を恨んでいました。そこで殺人の衝動を抑えられず、自分のルーツである精神病院の跡地で肝試しに来ていた観光客を惨殺したのです。

しかし本当の目的は母親の殺害にあり、著者としてジャーナリストとして有名になったラナと対決します。そして母を武器にした狡猾なラナに騙され頭を撃ち抜かれてしまいます。『アメリカン・ホラー・ストーリー』はあくまで人間関係がテーマにあるのか、このあたりのもつれの表現は上手いです。ラナが善か悪ではっきり描かれていないのも、現実を模倣した表現で好きでした。

アルマとグレース

アルマはキットの妻で黒人です。キットからはエイリアンにアブダクトされたと思われており、世間からはキットに殺されたと思っています。グレースとは精神病院でキットと仲良くなり、院内での情事によりキットの子を宿しました。そして院内で銃弾に当たって死に、エイリアンのアブダクトによって生き返って戻って来るのです。

ラナの活躍により本物のブラッディ・フェイスが世に晒されると、キットはグレースと共に自宅に戻ります。そこにはエイリアンのアブダクトから帰って来たアルマもいました。キットはふたりとの間にできた男女の子供をそこで育てます。

アルマとグレースにはエイリアンにアブダクトされたという共通点があるのですが、ふたりには認識の違いがありました。アルマはこの体験をトラウマとしており、グレースは神聖な思い出としています。この認識の違いが悲劇を生むことになろうとは……

グレースには絵の特技があり、このエイリアンの絵を愛おしそうに描きます。アルマはその絵を子供たちに見て欲しくなく、さらにアブダクションの経験を子供たちに語り、自分たちの出自を知って欲しいと望んでいるのです。

さらにグレースがこのエイリアンをもう一度呼び出したいと思っていることをアルマに伝えたことにより、悲劇はやって来ます。またエイリアンに連れ去れることを恐れたアルマがグレースを斧で惨殺されてしまいます。

ここでもアブダクションというストーリーは煮え切らないうちに終わりを迎えます。病気を患ったキットを最後に迎えにきますが、エイリアンの正体も目的もわからずじまいで終わっているのが残念です。

『アメリカン・ホラー・ストーリーSeason2』の総合的な評価と感想:設定とテーマが消化不良になってしまったもったいないシーズン2

ホラーに欠かせない3大要素のスプラッター、悪魔、アブダクションが贅沢に盛り込まれた『アメリカン・ホラー・ストーリー:精神科病棟』ですが、これらの贅沢要素が料理しきれていなかった感は否めません。それだけにおしいと感じてしまう部分も多いです。

まずは博士の実験により生まれてきた怪物たち。これが現代の廃墟に住まう正体不明の殺人鬼へのミスリードで作り出されたのはわかります。が、ろくな答えにならぬまま博士自ら手で引き金を引かれたのは残念です。

アブダクションにしてもエイリアン側から答えが出されずにフェードアウトした状態。物語の主役もラナに横取りされて、結末したのかしてないのか宙ぶらりんの状態。オチのない現実を表現した結末は賛否わかれるかも。個人的な趣味全開で言えばこういう表現は好きですが、もうすこし落としどころを示して欲しかったのも正直な感想です。

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