『エッジ・オブ・バイオレンス』は読み応えある文学のような映画

ホローポイントから始まるバイオレンス映画

『エッジ・オブ・バイオレンス』の基本情報

エッジ・オブ・バイオレンス』(原題:The Hollow Point)は2016年にアメリカで公開された映画です。日本では未公開でしたが、先日WOWOWで放送されました。監督はゴンサーロ・ロペス=ガイェゴ。

メキシコ国境近くの町を舞台にアメリカからメキシコへの弾丸密輸に加担していた男への捜査から後戻りできない戦いへと引き込まれるストーリーです。新任保安官がウォレスが見つけたのは売り上げを持ち逃げされたために友人が殺される現場に居合わせてしまい自分もその殺し屋に重傷を負わされます。組織の依頼で持ち逃げの報復をはじめた殺し屋とウォレスとの意地を守るための戦いが始まったのです。

出演者は以下の通り:

 パトリック・ウィルソン
リン・コリンズ
イアン・マクシェーン
ジョン・レグイザモ
ジェームズ・ベルーシ

与えられるのは答えではなくそこに辿り着くための材料

この映画『エッジ・オブ・バイオレンス』は余計な説明を一切しない潔さが特徴です。つまり映画を観るだけでは、すべてを観ることはできない。ひとつひとつのピースを自分で組み立てないと全容が見えてこないのです。

特に人物たちの関係は初登場では説明してくれない。たとえば例えば昔の恩師と生徒が再会するシーンがあったとすると、分かりやすい映画では「先生、久しぶりですね。僕が小学校を卒業した○○○○年以来ですね」とか、説明臭い台詞を不自然に言わないのです。

本作『エッジ・オブ・バイオレンス』を例に取れば、リーランド(老保安官)が凶弾に撃たれて絶体絶命かというシーンがあり、別の人物たちのシーンが終わったあとで生きた状態で戻ってきます。普通だったらここでそのとき何があったのか編集で説明するところですが、それもありません。

この映画は過去にさかのぼるということはせず、時間は現実と同じで一方通行です。与えられなかった過去のシーンは落ちているヒントを探して、自分で考えながら観る必要があります。お手軽で分かりやすい作品しかウケない日本で公開されなかった理由はそこにあるのかもしれません。個人的には頭を使って観る映画は好物です。

あと戻りできない男たちの心情が泣ける

金の持ち逃げで殺されたウォレスの親友は元カノの旦那であり、この元カノの依頼で親友を探すことになります。そこで遭遇した殺し屋にウォレスは右腕を切り落とされてしまいます。まさかの展開。スティーブン・キングの『ダーク・タワー』に登場する主人公ローランドの序盤でロブスターの化け物に右手の指をあらかた持っていかれますが、それくらいの衝撃でした。

瀕死の重傷にも関わらず、病院を抜け出して殺し屋の捜査に向かいますが、ここで私怨まるだしなのが人間味があってよかった。被疑者をぼっこぼこにするだけじゃ飽き足らず、関係ないその恋人に銃を突きつけて真実を話さないと殺すと脅す始末。

殺し屋を負うために自分が犯罪(暴力)の領域に片足を突っこむこのシーンが邦題の『エッジ・オブ・バイオレンス』のインスパイアになっているんでしょうね。その後で事態は一変します。殺し屋のターゲットリストに元カノの名前が載っていたのです。

まだ気がある元カノの命を救うためにウォレスはあとに引けない戦いに引きずり込まれたのです。そして町の平和を守るという保安官としての立場と意地を守る戦いでもあります。自分は殺しのリストにはないのに、あえて恐ろしい殺し屋に立ち向かわなければならない境遇には泣けます。

かと思えば殺し屋側にも泣ける理由がありました。殺し屋にも大切な人がいて、仕事を完遂させる必要があります。ここでやめれば組織の顔に泥を塗ることになり、それが許されるわけもありません。そうなれば彼女も危ないのです。

組織の金を持ち逃げした見せしめとして無関係であるはずの持ち逃げしたヤツの妻まで殺すことに疑問を抱いているものの、そうしなければならないジレンマ。そして仕事を達成させるにはウォレスと対決し勝つ必要もありました。そんな殺し屋の境遇に泣けます。

俳優たちが良質すぎる

パトリック・ウィルソン

新任のウォレス保安官を演じたのはパトリック・ウィルソンです。『インシディアス』で有名となりました。正義感のある保安官だけどどこか暗い影のある演技が良かったです。

イアン・マクシェーン

前任の保安官を演じた イアン・マクシェーン が実に渋い。『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』や「ジョン・ウィック」シリーズで観たことある人も多いはず。

ジョン・レグイザモ

殺し屋を演じたのはジョン・レグイザモです。彼目当てでこの映画『エッジ・オブ・バイオレンス』を観た人も多いはず。冷徹な殺し屋の演技が素晴らしく、心の中に抱える憂いの演技も良かったです。

原題のホローポイントって何?

原題のホローポイントがそのまま邦題にならなかったのは、ホローポイントが日本人にとって馴染みのない言葉だからだと思います。ホローポイントとは拳銃用の弾丸の種類です。

拳銃の弾丸はこのホローポイントとフルメタルジャケットの2種類に分けられます。誰しもが思い描く標準的なフルメタルジャケットに対して、ホローポイントは弾頭の先端が窪んで空洞になっています。

これにより対象にぶつかった衝撃で、弾頭部分がひしゃげて、周りの肉や血管を切り裂きます。ホローポイントとはつまり、殺傷能力に特化した弾丸なのです。これに対してフルメタルジャケットは先端部分が覆われているため、貫通力や破壊力に長けています。

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